法律が変わる?不動産契約の最新規制情報

不動産取引を行う際、契約書だけでなく、関連する法律や制度が変わっていることを把握しておくことは非常に重要です。近年、売買・仲介・賃貸といった取引の仕組みを背景に、透明性を高めるための規制強化や、電子化・登録制度の見直しなどが進んでいます。ここでは、特に契約時に影響が大きい法改正や規制の最新情報を整理し、契約当事者が押さえておきたいポイントをお伝えします。

1. 主な改正概要:何が変わったのか

まず、最近施行または施工予定の改正の概要を押さえておきましょう。

  • 2025年1月及び4月に、宅地建物取引業法施行規則に関して改正が行われました。特に、いわゆる「囲い込み」防止のための流通登録制度の強化が含まれています。
  • また、不動産登記法も2024年4月1日に改正が施行されており、相続登記の義務化、外国居住名義人の国内連絡先記載義務などが加わっています。
  • さらに、流通・広告・重要事項説明の電子化や、契約時書面の見直しなど、取引プロセス全体にかかわる規制変更も進んでいます。

2. 契約当事者が特に注意すべきポイント

実務上、「契約書を交わせば安心」というだけでは足りません。以下のようなチェックポイントが重要です。

  1. 流通登録と囲い込み防止:改正後、仲介業者は物件の状況を REINS(不動産流通標準情報システム)に登録し、他社にも情報を適切に開示する義務があります。売主・買主ともに情報の不透明性を減らす方向です。
  2. 登記制度の強化:不動産登記法の改正により、相続登記の義務化や、名義人が国外居住者である場合の連絡先義務化など、将来的な権利関係の整理がより厳格になっています。契約段階でも登記の見通しを確認しておくべきです。
  3. 電子化・書面見直し:重要事項説明書や契約書面の電子化が法的に整備されつつあります。紙文化からの移行が進んでおり、電子署名やデジタル交付が適切に扱われているか確認が必要です。
  4. 業者側の手続き見直し:仲介業者・売買業者等の登録・免許・名簿の記載事項にも変更があります(例:従業者名簿に記載する個人情報の見直しなど)。間違った書類で契約を進めてしまうリスクがあります。

3. 実務における契約書作成時の影響と対策

これらの法改正が契約書作成や取引の進め方にどう影響するか、またどんな対策を講じるべきかを見ていきます。

  • 契約前の権利状況・登記状況の確認:登記制度の強化によって、名義人や登記の手続き未了が契約後のトラブル原因になる可能性が高まっています。契約書には「登記を○○までに完了させる」等の条項を入れるのも有効です。
  • 媒介業者・仲介業者の情報開示チェック:業者が囲い込みを行っていないか、登録義務を果たしているかを確認。売主・買主双方が業者の登録状況を契約前に確認すると安心です。
  • 電子書面・署名の確認:契約書が紙だけでなく電子で交付されるケースも増えています。「電子でも有効である旨」「どのような形式で署名・保管されるか」などを契約書条項に明記するとよいでしょう。
  • 契約書条項のアップデート:従来の契約書フォーマットが最新の法制度を反映していない恐れがあります。契約書テンプレートや約款を定期的に見直し、必要に応じて専門家のチェックを受けることをおすすめします。

まとめ

不動産契約を取り巻く法律・制度は、時代の変化・社会のニーズに応じて改正が続いています。特に、透明化・電子化・登記強化といった方向性が明確であり、契約当事者としてもその流れを無視することはできません。契約書を交わすだけで安心するのではなく、最新の規制内容を理解し、契約前・契約中・契約後それぞれで適切な対応を行うことが、トラブル回避の鍵となります。専門家への相談や契約書チェックの仕組みを取り入れながら、安心して取引を進めていきましょう。

著者
契約リスクアナリスト
リーガル匠

元・法務スタッフ。不動産契約書のチェックやトラブル対応を通じて、法律と実務のギャップを痛感。現在はフリーの契約リスクアナリストとして、難解な法制度を「現場でどう使うか」という視点で分かりやすく解説。不動産詐欺・業者トラブルの法的対策にも詳しい。

リーガル匠をフォローする
法律・制度と不動産取引
シェアする
リーガル匠をフォローする
タイトルとURLをコピーしました