不動産の購入や賃貸契約を進めていると、契約直前になって突然「追加費用が必要になります」と言われるケースがあります。すでに物件選びやローン審査が進んでいる段階での告知であるため、多くの人が断りづらく、結果的に高額な負担を強いられることになります。こうした「契約直前の追加料金」は、悪質な不動産会社が仕掛ける典型的なトラブルのひとつです。本記事では、その具体的なパターンと回避策を詳しく見ていきましょう。
1. よくある「追加請求」トラブルの実例
契約直前で提示される追加費用には、いくつかの典型パターンがあります。
- 名目不明な「事務手数料」や「調整費」:実態のない費用を上乗せするケース。
- リフォーム・クリーニング費用:契約時に急に「原状回復が必要」として高額請求される。
- ローン関連の「仲介サポート料」:本来無料であるべきサポートを“特別サービス”として請求。
- 広告費・契約書作成費:本来、仲介手数料に含まれる費用を別途請求。
これらはいずれも「契約直前で引き返せない心理」を突いた悪質な手法です。業者によっては「他の客も支払っています」と社会的圧力をかけてくることもあります。
2. なぜ契約直前で請求してくるのか
悪質な不動産会社が契約直前に追加料金を提示する理由は明確です。それは、「顧客が断りにくい状況にある」からです。すでに時間と労力をかけて物件を選び、書類を整えた後では、多くの人が「今さら断るのは面倒だ」と感じます。この心理を利用して、違法ではないギリギリの範囲で不当な利益を得ようとするのです。
特に、営業担当者が「上司からの指示で」「本社の決定で」などと責任を曖昧にする場合は要注意です。これらの説明には、根拠や書面がないことが多く、トラブルに発展しても「口頭での説明でした」と逃げられてしまうことがあります。
3. 契約前に確認しておくべきチェックポイント
このような被害を防ぐためには、契約前に冷静な確認が欠かせません。次の3つのポイントを押さえておきましょう。
- 見積書と契約書の照合:見積書に含まれていない費用が契約書に追加されていないか確認します。
- すべての費用を明文化:「後で説明します」「当日お伝えします」といった曖昧な発言は危険信号です。すべて書面で残すよう要求しましょう。
- 不明点は宅地建物取引士に質問:契約内容の説明時には、宅地建物取引士が同席する義務があります。疑問点を明確にし、署名前に納得できる状態にしてください。
不透明な費用が提示された場合、「すぐに契約しない」「一度持ち帰って検討する」という姿勢を貫くことが最も有効です。
4. 実際に追加請求された場合の対処法
もしも契約直前に高額な追加請求を受けた場合、まずは「理由の説明」と「法的根拠」を文書で求めましょう。宅建業法第47条では、不当な取引条件の提示や誤解を招く説明は禁じられています。根拠を示せない場合、その請求自体が違法の可能性があります。
また、支払い後でも泣き寝入りする必要はありません。国民生活センターや不動産適正取引推進機構などに相談すれば、返金や行政指導につながるケースもあります。記録を残すために、メールやLINEでのやり取りを保存しておくことも重要です。
5. まとめ:契約前こそ「冷静さ」が最大の武器
契約直前の高額な追加請求は、典型的な「心理的圧迫取引」です。営業マンの言葉に流されるのではなく、「なぜ今それが必要なのか」を常に問い直す姿勢が大切です。不動産取引は金額が大きいため、わずかな油断が大きな損失につながります。疑問を持った時点で一旦立ち止まり、第三者や専門機関に相談する勇気を持ちましょう。冷静な判断こそが、悪質な取引から身を守る最良の防衛策です。
